スピーチ原稿の書き方
はじめに
私はスピーチが苦手です。
苦手、と言っても様々な理由がありますが、私の場合は過去の失敗が足を引っ張っています。
高校生の頃、総合的な学習の時間で「SDG’sについてスピーチしなさい」という課題が出されました。課題自体はさして難しくなく、順調に原稿を書き進めることができました。しかし、いざ発表すると、聞き手であるクラスメイトらは微妙な顔をしていました。それなりに頑張って考えた原稿だったため、今でも少し苦い経験になっています。
今になって振り返ってみると、当時書いたスピーチ原稿は下手でした。言いたいことを詰め込んだだけで、論点が曖昧です。そもそも、もう少し高校生向けにテーマを簡単かつ身近な程度にまで落とすべきでした。もう何年も前の出来事ですが、ぱっと思いつくものだけでもこれだけあります。
今回は、私の苦い経験を基に、スピーチ原稿の書き方について考えてみようと思います。スピーチのやり方は千差万別ですが、これから提示する3つの段階に沿って作成することで、過去の私のような残念なスピーチになってしまうことは少なくなるでしょう。
第1段階:テーマを決める
そもそもスピーチというのは、人前に出て調べたことや考えたことなどを発表するものです。小論文やレポートとは違い、数人~数十人、場合によってはそれ以上の聴衆がいます。そのような場で何を話せばいいかと迷いますが、そんなに難しく考えなくてよいです。大体の場合、特に高校までの場合であれば、お題が指定されていることがほとんどです。もしそのような指定がないときも、発表する場に合わせて適切そうなものを選ぶのが良いでしょう。もしそれで滑っても、指定しなかった方が悪いのです。
ここでいう「テーマを決める」というのは、すなわちどこに焦点を合わせて話をするかを決めるということです。
大半のテーマはそのままだと抽象的で、どこから手を付けたらいいか戸惑ってしまうことが多いです。そのため、書き手たる自分側で、どこに焦点を合わせるのかを決める必要があります。勿論、この先内容を考えていく中で無理そうだと判断したら、第1段階に戻って考え直すというのも良いと思います。
では、どのように決めていくのが良いでしょうか。
一番簡単なものは、自分の興味・関心に沿ったものです。大前提として、他人のスピーチを聞くというのは非常に退屈です。これはあくまで私の経験に基づく考えですが、他人の話を聞いていて一番面白くないのは、スピーチしている側が楽しそうに話していないときです。どんな話題だろうと、死んでる目で話されたら聞く気も起きません。逆に、テーマがどれだけつまらなそうでも、話し手が生き生きとした表情なら、多少は聴こうと思えます。聴衆を退屈させないために、まずは話し手である自分自身が盛り上がれるテーマにしましょう
たとえば、趣味や自身の経験、興味のある分野に関することなどは、とても話しやすいと思います。人間というには大なり小なりオタク気質を持っています。好きなことについてであれば、どれだけ長い時間だろうと語り続けることができます。それに比例して、内容も深めやすいというわけですね。
とはいっても、聴衆も人間です。こちらがどれだけ熱く語っていても、1ミリも興味がなければただの拷問と変わりません。可能な限り、聞き手も興味を持ってくれそうな話題を選択するのが良いでしょう。同年代の人や共通の趣味を持っている人が聞き手であれば、共感できるようなテーマにすると、そんなに退屈そうな顔をしないかもしれません。
特に高校生で課される場合が多いですが、社会的な問題に対して自分の意見を発表しなければいけないことがあります。しかしこの場合でもやることは変わらず、上のように内容を身近にしてあげれば良いです。むしろ、社会問題に関するテーマの場合、一般的に語られている程度で終わってしまい、新鮮味も面白みもない空虚なスピーチになってしまいがちです。話し手も聞き手も死んだ目をしている空間は地獄絵図なので、互いに少しでも興味をもてるようなテーマにしてあげるのが良いと思います。
ここまでテーマの決め方を語ってきましたが、一番大切なことはどれだけ面白そうな話だと思わせるかです。どれだけ内容が良くても、聞き手は赤の他人なので、大体が興味を持ってくれません。ほんの少しでも興味を持ってもらえたら、基本的にスピーチは成功です。
では、どうしたら面白そうな話だと思わせられるでしょうか。この問いに対する答えは無数にありますが、その一つとして相手にとって意外な視点で話をすることが挙げられます。聴衆が今まで持ったことがないであろう視点を提示することで、多少は面白く感じてくれるのではないでしょうか。少なくとも、私はそう信じていますj。
第2段階:構成を練る
テーマが決まったら、次は全体の構成を練っていきます。
小論文や志望理由書などと同様、おおよその雛形は決まっています。とはいえ、最終的にはこちらの言いたいこと(=主張)が伝わればいいので、最低限のルールを守っていれば何でもありだとは思います。
「スピーチなんてただ話すだけだから、構成なんていらないでしょ。」
こう考える人は案外多いですが、それは間違いだと断言できます。小論文とは異なり、スピーチは聞き手に直接語り掛けるものです。そのため、話の流れが途切れないように工夫を凝らさなければなりません。特にスピーチでは、聞き手が一度内容を理解し損なうと、その後の話も頭に入ってこなくなることがあります。そのため、全体の流れをスムーズに保つことが大切です。
スピーチの構成を考えるとき、大半の人が陥りやすいのは、何をどの順番で話すべきか整理せずに進めてしまうことです。結果として、内容が散漫になったり、論点が曖昧になったりして、聞き手に伝わりにくいスピーチになってしまいます。そこで、自分が話すべきポイントをしっかりと整理し、どのように話を進めるかを計画することが必要です。
一般的な構成は以下の組み立て方です。
1.導入:聞き手の興味を引きつけ、スピーチのテーマや目的を簡単に伝える。
2.本論:スピーチの主要なメッセージを伝え、聞き手に納得してもらうための理由や具体例を提供する。
3.結論:スピーチのメッセージを要約し、聞き手に強く印象づける。
では、具体的に見ていきましょう。
導入ではまず聞き手の興味を引くために、簡単なエピソードや質問を使います。これは、聞き手が最初から集中してくれるようにするための工夫です。映画や漫画、小説では特に顕著ですが、どれだけ後半が面白くても、前半が退屈であれば誰も読みません。それはスピーチも同じです。聞き手の関心を如何に引き、意識をこちらに向けさせられるかで、聴衆の反応は決まります。
次に、本論では、スピーチのメインとなる内容を展開します。この部分が最も重要で、話すポイントを2~3つに絞ると良いでしょう。ポイントを絞ることで、スピーチの細かい内容を検討していく際に役立つだけでなく、聞き手がスピーチを振り返った時に内容を思い出しやすいです。特に、スピーチの論点は3つにまとめると、聞き手に覚えやすくなります。例えば、「挑戦することのメリットを3つ挙げます。1つ目は自信、2つ目はスキル、そして3つ目は達成感です。」というように、3つの要素に分けることで聞き手の印象に残りやすいです。
聞き手は抽象的な話よりも、具体的な経験や事実を多数引用した話を好みます。ただでさえ抽象的な話は理解に時間がかかるのに、一時停止や巻き戻しのできないスピーチで多用するとどうなるかは想像に難くないでしょう。また、自分の経験や他人の話、データや調査結果などを引用することで、説得力を持たせることもできます。
話の中でイメージしやすい比喩や視覚的な例えを使うと、聞き手が内容を記憶しやすくなります。例えば、「挑戦することは山登りのようなものです。最初は大変ですが、頂上に立ったときの景色は格別です。」のように、視覚的な比喩を使うと効果的です。
最後に、結論では、話した内容を簡単にまとめ、聞き手に印象を残すような強いメッセージを伝えます。スピーチの締めくくりは特に重要で、ここでの言葉が聞き手の記憶に最も残りやすい部分です。シンプルかつ力強い言葉でまとめることで、スピーチ全体が引き締まります。
また、聞き手に「この話を聞いて自分はどうすべきか」を考えさせることも有効な手段の1つです。「次のステップは何か?」という問いを投げかけたり、「皆さんもぜひ挑戦してみてください」という呼びかけをすることで、行動につながるメッセージが伝わります。
ここまで構成の作り方について述べましたが、最も重要なのは、聞き手にどれだけわかりやすく伝えることができるかです。内容がしっかりしていても、話の流れがわかりにくければ、聞き手はすぐに興味を失ってしまいます。どんなに魅力的なテーマでも、わかりやすい構成を心がけることで、スピーチはより効果的になります。
わかりやすい構成とするには、どれだけシンプルなものにできるかが重要です。聞き手を飽きさせず、伝えたいことを伝えるには、決して複雑な手順など必要ではなく、単純明快でわかりやすくするかが要になります。
第3段階:原稿を執筆する
当然だと思いますが、原稿は書きましょう。原稿を書いていく過程で内容を更に深堀りしたり、「もう一度テーマを検討するか」を検討する材料になります。
ところで、あなたは「話す速度で最も適切な、1分あたりの文字数」について、考えたことはありますか?
大体の人が聞き取って内容を把握できる文字数として、1分間に300文字くらいが話す速度として適切だと言われています。とはいっても、スピーチは間を置くことも重要なテクニックであるため、文字数に固執する必要性は薄いです。あくまでも”目安”の一つ、といったところでしょうか。
もしあなたが人前で話すことが苦ではない方なら、多少のアドリブを交えることができるだけの余力を残しておくのも良いでしょう。聴衆の反応に合わせ、具体例や言い回しを変更することで、スピーチに慣れていそうな雰囲気を醸し出すことができます。
スピーチは、読み物ではありません。小論文やレポートのような書き言葉ではなく、自然な話言葉を使わなければなりません。難しい言い回しや堅苦しい表現は可能な限り避けて、日常での会話に近づけることがコツです。
また、聞き手がいなければスピーチは成り立ちません。先程も述べましたが、専門用語や難解な言葉は、わかりやすく平易な表現に置き換えると伝わりやすいです。他には、スピーチ中に聞き手に対して問いかけを行うのもよいでしょう。ただただ聞いているのではなく、スピーチの一部に聴衆を取り入れることで、関心を集めることができます。
おわりに
ここまでいかがだったでしょうか。
スピーチ原稿の作成は、決して簡単なものではありません。私自身、過去の失敗からスピーチに対して苦手意識を持っていますが、上述の3段階に沿って進めれば、より伝わりやすいスピーチを行うことができます。
特に重要なのは、聞き手に対して分かりやすく、興味を引く内容にすることです。聞き手が共感できる話題を選び、シンプルな構成と自然な話し言葉を使うことで、聞き手に自身の考えが伝わりやすくなります。また、スピーチは「伝える」ための手段であることを忘れず、何を伝えたいのかを明確に持ちながら準備を進めることが大切です。
スピーチは練習を重ねることで上達しますので、恐れずに挑戦してみてください。
ご清聴、ありがとうございました。
もう少し実用的な話を……
既にお気づきかもしれないが、先ほどまでの説明は、実際のスピーチ原稿に寄せて記述したものである。当初はただの論説文にしようと考えていたが、いつの間にかスピーチ寄りの文章構成となってしまった。元は論説文の構成であるが、多少はスピーチ原稿というものがどういったものかの雰囲気は感じられるものに仕上がっただろう。そうであってほしいものだ。
上記のスピーチ原稿擬きは、おおよそ4800字である。単純計算すると、15~16分ほどだろうか。これを書き始めたのは午前0時過ぎ、書き終わったのが同日午前4時30分と考えると、それなりに早く執筆しきれたと思う。しかし、文章の端々から日本語の下手さが滲み出ているので、やはり時間をしっかり掛けた方が、より良いものの完成に近づくと思う。
さて、ここからはもう少し実用的な話をしていこう。これはあくまで過去に私が試していたものなので、使えそうなものだけ試してみるのが望ましい。
1.台本作りはExcel or スプレッドシート
台本というのは、基本的に1文ごとに分けられている。小論文みたく文章を書き連ねても良いのだが、複数人で発表する際や、間の取り方や話し方に工夫を凝らしたいことが多いスピーチでは、脚本のように分けて書いてしまうのが良いだろう。
せっかくなので、実際に発表する機会はないものの、台本形式に変換してみた。『第1段階:テーマを決める』を用い、ほんの少しではあるがコメントも加えてみた。参考になれば幸いである。
2.内容の深堀りは、マジカルバナナ
「こいつはいったい何を考えているのか」と思うかもしれないが、これは本当に役に立つ。
そもそもマジカルバナナとは何か、その定義について改めて確認しておこう。ジェネレーション・ギャップというのは恐ろしいもので、いつかマジカルバナナを知らない世代がやってくるかもしれないのだ。とはいえ説明するのも難しいので、話題のAIである”chat-GPT"に聞いてみようと思う。
マジカルバナナの説明
マジカルバナナは、日本で人気のある言葉遊びの一種です。リズムに合わせて単語を連想し、次々とつなげていくゲームで、テンポよく進めることが求められます。主に子どもたちの遊びや、コミュニケーションのきっかけとして使われることが多いです。
基本ルール:
- 最初の単語: 「マジカルバナナ、バナナといったら○○」と、ゲームの始め手がバナナから連想される単語を言います(例えば「黄色」)。
- 次の人: その単語に関連する言葉を次の人がつなげます。たとえば「黄色と言ったら、太陽」。
- 繰り返し: 次々に連想を続けていきます。「太陽と言ったら、暑い」「暑いと言ったら、夏」など。
重要なポイント:
- テンポを保つ: リズムに乗って素早く言葉をつなげていくのがポイントです。間が空くとミスとされることが多いです。
- 繰り返さない: 同じ単語が繰り返されないようにするのも重要です。
効果・目的:
- 連想力や語彙力を鍛える: 瞬時に関連する単語を思いつく必要があるため、言葉の幅が広がり、連想力が高まります。
- コミュニケーション: グループで楽しむことが多く、チームビルディングやアイスブレイクの役割を果たすこともあります。
このゲームはテレビ番組「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」で広く知られるようになり、特に子どもたちの間で人気を集めました。
ここでも述べられているように、マジカルバナナには、連想力を向上させる効果がある。この連想力というのは小論文やスピーチ原稿を書いていく中で最も重要な力である。
設定したテーマを深堀していくなかで陥りがちな問題として、「書くことが見つからない・思いつかない」といったものである。これを読んでいる人の中にも、思い当たる節があるだろう。かくいう私も、今ではそこまで陥ることはないが、確かにある経験だ。その解決として、関連する言葉や事柄を連想していくやり方がある。それが所謂”マジカルバナナ”だ。
マジカルバナナを用いることで、内容に深みが出る。また、その過程で様々な視点から連想していくので、客観的かつ多角的な視点を養うこともできる。これからの人生においても、役立つ場面は多いだろう。
3.”それっぽい文章”の書き方とは……?
最終的に読んでもらったり聞いてもらったりするのは、当然ながら赤の他人だ。興味がある内容ならまだしも、興味関心に欠けるものであればあるほど、誰だって聞く気など湧いてこない。しかし、興味が微塵も湧いてこないようなテーマでスピーチをすることはよくある話だ。ならばせめて、スピーチの体裁を保ち、最低限の雰囲気を纏ったものを作ろうじゃないか、というのがここでのテーマである。「なんかよくわかんないけど、多分そうなんじゃないか」という風に思わせることができたなら十分、くらいに割り切っておくことも、スピーチの場では重要であるのだ。
”それっぽい雰囲気”を纏わせるには、以下の要素が必要となる。
1.文章をつなげる接続に気を付ける
2.表現力の幅を広げる
今挙げた2つは単純そうに見えて、とても奥深い。特に2つ目の”表現力の幅を広げる”というのは、これまで培ってきた語彙力に大きく影響を受ける。ちゃんと書こうとすればするほど難しくなるが、その場しのぎの一回限りでしかないなら、取り繕うことは可能である。
1つ目の”文章同士の接続”だが、ここでいう”接続”というのは、何も接続詞だけではない。文という”1つのかたまり”をつなげることでもある。順接(だから)・逆説(しかし)・具体(例えば)・補足(また)・強調(特に)・理由(なぜなら)など、これらの表現が一般的な”接続”と呼ばれているが、これらだけでは少々単調で、文章が長くなっていくにつれて苦しくなってくる。特に、話題を転換させる場合で苦労するだろう。
このような問題への解決の取り方としては、スピーチがそれなりにやりやすい。というのも、小論文やレポートとは違って自由に間を取ることができるため、比較的簡単に話題を転換させられる。まあ、何の脈略もなく突然話題が180度変わるなら多少の工夫は必要だが、構成をしっかり練れていればそのような事態には陥らないだろう。
さて、問題の2つ目である”表現力の幅”についてだが、今からでもお手軽にできるのは、言い換え表現に力を入れることだろう。小論文やレポートでも使うことができるが、似た内容を別の表現に差し替えてもう一度言及することで、文量の嵩増しとともに、ちゃんと考えていそうな文章を作ることができるのだ。
実際、冒頭に書いたスピーチ擬きでは、この手法が多用されている。もしこの場で戻って見返した人がいるなら、この手法は効果があったと言って良いだろう。
今度こそ”おわりに”
ここまで長々と、スピーチについて語ってきた。
スピーチは一見難しそうに見えて、本当に難しい。場数を踏み経験を積まないと、見えてこないものがたくさんある。現に、ここまで語っておいてちゃぶ台をひっくり返すようだが、これらの論説も間違いだらけかもしれない。
しかし、スピーチというのは千差万別。人によって異なるものでもある。様々な手法が存在していて良いし、むしろそのほうが聞いていて面白い。最低限の体裁を保てていれば、あとは話し手の実力次第だろう。
とはいえ、ここまでそれなりに時間をかけて書いたというのもあるので、もし生かせる場面があれば利用してほしいという気持ちも勿論ある。これからの人生で訪れる機会、そのどこかで役に立つことができたなら幸いである。